トカゲの脳が好む線形や相称、そして科学、合理主義 株式市場の報復

今日はまた、画期的な言葉に出会いました。

「トカゲの脳」です。

これから語ることは哲学の認識論に当たるものですが、問題は学者のように理論を極め完成することは、われわれ事業者には何の利益ももたらしません。それでは単なる趣味道楽、酔狂な旦那芸に過ぎません。

目的は、起業し、それだけなく持続させ、かつあわよくば発展成長させるために、最新の経営理論、起業家哲学で武装し、大成功を収めることです。学問は実業の友なのです。

われわれは欧米人が発明した資本主義と、それを機能させる市場社会の中にあって、自社の商材と金銭とを流通させています。

サラリーマンでも公務員でも乞食でも、お金を稼ぐかもらうか、あるいは盗むかしなければ、生きていくことはできないのです。
(人里離れて、無人島とかの自給自足は、ここでは対象外とさせてくださいね)

よって、経済社会の正しい分析こそが、いつも先進的であり画期的な理論となってくるとは思いませんか?

つまり現代では、偉大な哲学は、経済学もしくは株式市場分析から生まれ、そして実証されているのです。

天動説と地動説の事例 科学は科学によって否定される

ご存じのとおり、天動説はすべての天体が宇宙の中心である地球の周りを回っているという説です。これに対し、地動説は地球も他の天体と同じように宇宙の中心にある太陽の周りを回っているという説です。

天動説は「geocentric theory」で、より正確な訳語は「地球中心説」となります。地動説は「heliocentric theory」で、こちらは「太陽中心説」です。

しかし、天動説と地動説の方が、かっこいいです(笑

さて、天動説の代表者プトレマイオスなんぞは、当然、現代のわれわれ凡人よりもはるかにすばらしい頭脳を持っており、異常に緻密な計算を重ねて「天球図」を完成させ、古代天文学の集大成を提示したのです。

さて、16世紀になって大航海時代がはじまると、羅針盤が発明され、夜は星図だけをたよりに遠い海洋を行き来するようになるのですが、特に火星とか金星の位置が今ひとつずれていて、航海に支障をきたすようになるわけです。

つまり、船舶による貿易などの経済活動において、天動説が役立たずとなってきたのでした。

そして、学問は実業の友、カトリック教会の司祭コペルニクスは、革命的な天体観測や計算方法を出版するのです。

ただし、後世に「コペルニクス的転回」と言われるわりには、世の中は地動説をすんなり受け入れたわけではありません。

その後もガリレオ裁判にみられるような、宗教的な問題もあったようです。

また、天文学者や占星術師などの職業学者は、煩雑な計算がともなうもののプトレマイオス天動説で天体の運動のほぼすべてを説明できたので、ならい覚えた旧説を捨てる切迫感もなかったのでしょう。

ただ例外として、望遠鏡で天体観測していた人たちの中には、特に惑星軌道の計算でコペルニクス地動説の方が、より整合性があると思いはじめていきます。

ここが重要なポイントです。

まず、理論や学説は経済活動とともに発展している。

また、時代とともに新しい経済活動に端を発しながら、旧説が確立した理論を推し進める中で、偶発的に天才が旧説を否定し新説を創造しています。

そして偶発的な新説誕生であるがゆえに、面倒臭い作業をともなうものの旧説が完全に破綻しない限り、旧説支持の学者は曲げないのです。

さらに、新説が信仰とか権力とかに抵触する場合は、イデオロギーとして体制維持のために新説を圧殺します。

学者とか権力者とは別に、実業に就く人たちは、旧説でも新説でも経済活動に都合のいい方を選んで、商売をおこなっているのです。

諸悪の根源 トカゲの脳

『トカゲの脳と意地悪な市場』というビジネス本があります。

日本語訳が非常によろしくないようで、訳者は他の翻訳本のすべてで、Amazonのレビューでボロボロです。

私は、エッセーで読む先物オプション市場 で摘み食いさせていただきました。

だが、失礼ですが上記サイトの構造に難があって、目当ての情報にスムーズにはアクセスできません。

トカゲの脳 site:www.itsuji.ne.jp – Google 検索 で「トカゲの脳」に関するトピックを拾い読みさせてもらいました。

トカゲの脳はむしろ、予測不可能な事を予測可能とし、相称性でないものを相称的に見て、線型的でないものを線型とみなし、平均的でないものを平均的に扱おうとする考え方だ。

トカゲの脳は全然パターンがないところでも、パターンを見つけるように造られている。

トカゲの脳は、過去に起きたことのパターンを探すように造られている。

「トカゲの脳」の過去へのこだわりは、人の脳が、過去と過去の非連続性や非線型性を認めず、将来は過去から連続すると線型的に考える結果だろう。

過去を振り返るトカゲの脳は、過去に機能したことをするように仕向ける。

規則性も、過去にこだわることも、他人との同調も、線型的に考えるトカゲの脳の機能である。トカゲの脳は、安全第一にする考え方で、今日は、昨日の延長と考えれば安心できる。昨日あったこと、たとえば兎か鹿を見つけ、それを捕らえたこと、どこかに食べられる植物を見つければ、きょうもそうあってほしいと願うのだ。

過去に起きたことは将来も起きる。人間はそう進歩していない。歴史は繰り返す。昨日のように今日も振る舞うことが無難であると思うのも、トカゲの脳である。

まとめますと、

  • 人間は誰でもトカゲの脳を持っている
  • トカゲの脳は、規則性を好む
    • トカゲの脳は、パターンのないものにもパターンを当てはめる
    • そのパターンは、過去の特に成功体験から探す
    • 時間的には、いつも過去の続きが現在であり、現在の続きが未来であると思い込む
  • トカゲの脳は、他人と同調することを好む
  • トカゲの脳は、偶発的なことに弱い
    • 弱いだけでなく、偶発性さえ認めない
    • 偶発的なことも、過去の先例に無理やり当てはめる
    • 慣れ親しんだパターンをこじつける
  • トカゲの脳は、その意味で合理主義の脳である
  • トカゲの脳は、その意味で科学の脳である

たった今の世界的な金融危機は、トカゲの脳の仕業ということになるようです。

さらにまた、トカゲの脳では、この金融危機を乗り越えることは難しく、別の意味でこの未曾有の艱難をチャンスと捉えて勝負に出るのは、つまり勝ち組になれるのはトカゲの脳を克服した者だけ、ということのようです。

なお、勘違いされるかもしれませんが、トカゲの脳とは文学的な比喩でも何でもなくて、生理学的な用語です。私たちの脳の中に、トカゲの脳が収まっているのです。

簡単には、本能的なものを司る脳の部位のことで、人間の合理的な判断を下す前頭葉もトカゲの脳を支配しきっていないという研究から、『トカゲの脳と意地悪な市場』の執筆につながっているのです。

トカゲの脳を克服する者

私の言いたい結論も分かりますよね?

トカゲの脳のままでは起業できないし、起業しても失敗する。

過去を先例と思わず、他人とは同調せず、まったく今までのパターンにはない新しいことで、事業をはじめる。事業を続ける。ということになります。

トカゲの脳では、地動説を生み出さず、地動説を受け入れず、地動説を弾圧するのです。

だがしかし、天動説がなかったなら、地動説もなかったことも確かです。

さらには、トカゲの脳を克服してプトレマイオスは天動説を完成させたのかもしれません。

もうひとつ、物々交換や貨幣は世界中で自然発生していますが、資本主義と市場社会は、欧米人が発明し世界に輸出しています。

偶発的な天才は時代や民族を問わず、いつでもどこにでも現れているのでしょうが、それによって生み出された資本主義と市場社会をトカゲの脳が受け入れパターン化するには、合理主義や科学といったものに、まるで信仰のようにどっぷり浸かる地域や民族である必要があったと。

よって、合理主義や科学が信仰のように大衆に浸透していない地域や民族では、自生しないし定着しないとか…

さて、偶発的なできごとのあとに、トカゲの脳は、強力にパターンを見つけ、パターンを当てはめ、パターンを世界化する。
あげくに、パターンを破壊する偶発性に復讐され、理解不能のパニックに陥り、トカゲの脳を克服した次世代ヒーローによって、新しいパターンがまた世界化すると。

 

トカゲの脳によって、また私の「偶発性の哲学」が進化しました。

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