ニコライ・モロゾフ「完璧な演技をして、他がミスするのを待て」村主章枝へ
ニコライ・モロゾフ、フィギュアスケートのコーチへのインタビュー記事が、12月30日の読売新聞に載っていました。
私は、フィギュアスケートは、浅田真央の活躍に目を細めるだけでなく、ISU(国際スケート連盟)の採点方法を検索アルゴリズムにオーバーラップさせながら、SEOという本業に役立ています。
さらに、浅田真央のタチアナ・タラソワと安藤美姫のニコライ・モロゾフの両コーチを、経営コンサルタントにたとえて、自社にとってどちらが有能なアドバイザーであるかも見ています。
「回転不足で大幅減点され、跳ばない方がマシというのは理不尽だ」
読売新聞の記事では、村主章枝について、織田信成について、安藤美姫について、最後にフィギュアスケートへの提言と、なっています。
最後の提言から。
これで、私はモロゾフコーチを再認識しました。彼は、ある面で非常にすばらしいです。
まず、今シーズンからの採点法では、高難度ジャンプの基礎点がぐっと上がりましたが、代償として回転不足は大幅に減点されます。
例えば浅田真央のトリプルアクセルは、成功すれば3回転半の「8.2」ですが失敗すれば2回転半の「3.5」、そして基礎点にプラスマイナスされるGOEは、成功すればプラス失敗すればマイナスです。
よって、トリプルアクセルの回転不足は、基礎点が3.5にダウングレードし、かつ失敗でGOEがマイナスとなりますから、最初からダブルアクセルを跳んだ方が点がよくなる確率が高いわけです。
これに、踏切や着地の足元(スケートの刃=エッジの向きなど)も、重箱の隅をつつくように厳密となって、ジャンプはハイリスク・ハイリターンの様相となっています。
こういった傾向は、フィギュアスケートの未来のためにならないと、モロゾフコーチは批判しているわけです。
あと、日本でフィギュア選手をアイドル扱いするのは馬鹿げていると…
村主、織田、安藤についてのモロゾフコーチのコメント
まず村主章枝について。
彼女が、3回転+3回転のコンビネーションジャンプができないのでパニック気味に自分のところにやってきた。
できないことをできるようにする前に、できることを完璧にするという方針で臨んだ。
このままでは、持ち前の感情表現の豊かさまでもが台無しになる。
「完璧な演技をして、他がミスするのを待て」と教えたとのことです。
次に織田信成について。
彼も、4回転ジャンプにこだわりすぎていた。
他のすべてが完璧なときにのみ、4回転は切り札になるのであって、まずはそれ以外を完璧にしようとアドバイスしたと。
安藤美姫については、技術面よりも精神面の強化だったとのこと。それは良く分かりますね(笑
安藤美姫は、みるからに女女していて、感情の起伏も激しく、それに応じて演技の出来不出来の波も大きく、安定感がないです。
モロゾフコーチの功と罪
確かに全日本選手権では、モロゾフコーチの思惑どおりの結果となりました。
だがしかし、グランプリファイナルでは、村主章枝は僅差で出場できませんでしたし、安藤美姫は6人中の6位に終わっています。
今のままでは、まぐれがない限り、村主も安藤も、浅田真央やキム・ヨナをしのいで金メダルを取ることは不可能でしょう。
そもそも、村主や安藤に金メダルを取らせることは、モロゾフコーチの目標になっていない可能性もありますから、私の頂点を目指すという評価軸が間違っているのかもしれません。
浅田真央 + タチアナ・タラソワ
さて、フィギュアスケートのフリースケーティングに注目してみます。
フリーでは、8つのジャンプ要素と、13までのジャンプ以外の要素で構成しなければなりません。
このうち、例えば浅田真央やキム・ヨナは、まずジャンプ以外の要素はほぼ完璧に演技しており、レベル4の得点をたたき出しています。
だとすれば、やはりジャンプ勝負となるわけです。
このジャンプがまた複雑で、8つのジャンプ要素のうち、コンビネーションジャンプは3つまで、3回連続は1つだけ、同じ種類の3回転以上のジャンプは2種類を2回まで、とややこしいです。
ISU公認のジャンプは、難易度の低いものから次の6種類です。
トウループ(Toe loop=T)、サルコウ(Salchow=S)、ループ(Loop=Lo)、フリップ(Flip=F)、ルッツ(Lutz=Lz)、アクセル(Axel=A)。
単発よりもコンビネーションの方が、2回転よりも3回転、3回転半の方が得点が高くなりますから、浅田+タラソワは、3回転半+2回転、3回転半、3回転+3回転、3回転+3回転といった野望をもっているわけです。
浅田真央の能力がずば抜けていて、タラソワコーチの常軌を逸したプログラムも、彼女ならこなせるということが真相かもしれませんが、これがフリーで完璧に演技された場合は、当然無敵となるでしょう。
つまり、この二人はありえない超人コンビで、フィギュアのイノベーションに取り組んでいるわけです。
そして、浅田真央は既に、ジャンプ要素以外のステップやスピンも最高レベルに達しようとしています。
ですから、ここまでの浅田真央の推移は、実はモロゾフ流とまったく同じで、課題となる高難度ジャンプを残して、他はすべて最高得点を出すまでにいたっていると言えるかもしれません。
モロゾフが指導する選手たちが、できることが完璧にならないから、なかなか高難度のジャンプに挑戦できない、何かあれば回避するという選択となっている可能性もあります。
とはいうものの、私の結論は、できることを完璧にこなすことが第一目標ではなく、それもやりながら、失敗を恐れず常に最高のものを追い求めるようなイノベーション志向のタラソワ流が好きですね。