『一勝九敗』ユニクロのファーストリテイリングCEO柳井正氏著

公私多事にてしばらく読書から遠ざかっていたのですが、恐ろしい本を読み終えました。

きっかけは、一勝九敗 – 池田信夫 blog です。

睡眠時間を割いても読書をします。睡眠障害が痼疾(こしつ、持病)であるのも幸いしました。
命を削ってでも読書をするのです。

本を読まない人はダメです。語彙が貧しく、視野が狭く、話題が貧相ですから…

ユニクロのファーストリテイリングCEOである柳井正氏の著作『一勝九敗』

タイトルから想像がつくとおり、スピード感のある大躍進を遂げたユニクロ=ファーストリテイリングも、経営においては1つの成功と9つの失敗という勝率1割であると。

まったく「心胆を寒からしめる」、壮絶な経営の書と言えるでしょう。

私は、人生観が変わるほどの衝撃を受けました。

一勝九敗:柳井 正(著)

私は、読みやすい方として単行本を選びましたが、リーズナブルな文庫本もあります。

この本は、ほったらかしで儲かるとか、千円で買った本を読んで百万円稼ぐとか、そういった愚劣なハウツー本を好む怠け者は読んではいけません。

また、零細企業のまま、運が悪いから大きくなれないとか、不況だから売上が下がったとか、泣き言繰り言をもらす経営者失格の人も読んではいけません。

大企業で一生楽したいサラリーマンや、管理職とは人を使う人、役員とは命令する人、と勘違いしている「社畜」も読んではいけません。

商売は失敗がつきものだ。十回新しいことを始めれば九回は失敗する。成功した経営者のなかには、もっと凄まじく「百回に一回程度しか成功しない」などとおっしゃる方もいる。

これは前書きの「はじめに」ですが、本文はこんな生やさしいものではないです。

柳井氏は、既にできあがった日本の経済システムのなかで、不条理ながんじがらめを突き破って、頂点に登りつめていることが凄いわけです。

この意味で、私が読んだ日本の経営者ものでは、ほかに中村邦夫氏くらいしかいませんね。

あとは、秩序がないところで、松下幸之助や本田宗一郎や井深大は偉大だったに過ぎないのです。

何もないところに何かをつくることよりも、既に大きなものが存在しているのにそれを壊しながら新しいものをつくることは、3倍のエネルギーや時間が要るわけです。

伸びているときのユニクロを天まで持ち上げ、業績が低迷したら地獄まで落とす経済マスコミを批判しています。

みんな勝手な結果論だけを述べようとしているにすぎない。どこか勘違いしている。良いときはよい面だけ、悪いときは悪い面だけしか書かない。それが良識あるビジネス誌と言えるのだろうか。

日本人の感覚は競争社会にさらされて少しずつ変化してきているのに、マスコミの競争意識は横並びのスクープ合戦に過ぎず、論調には何の独自性もない。

柳井氏は、父親が創業した「メンズショップ小郡商事」を継いだものの、世襲経営者とか二代目社長とか、そんな言葉はまったく当てはまりません。

そういった紳士服小売り屋を継ぐ前に、ジャスコで紳士服売り場を担当して、仕入れから品揃えなどの仕事の流れや仕組みを体験したことが、大きく役立っているそうです。
これも、大きな会社に勤めずに創業したり、家業を継いだりする成長できない経営者とは違うところでしょう。

小さな会社のときは、銀行も金を貸ししぶり、出店は控えめに控えめにと、ステキなアドバイスをくれたみたいです(笑
商社も、いい商品を回してくれなかったと…

田舎の小売店が、日本的なしがらみの1つ1つのハードルを越えていく、そのどれもが生死を分ける決断と行動をともない、より都市部への出店や、多店舗展開、商品開発、海外進出、人材募集、組織運営、社内改革、株式上場などなど。

零細企業が、大大企業へと成長し発展していく実録物語でもあり、失敗を重ねに重ね、それを肥やしにして、さらには成功さえもまぐれの中の真の勝因を抽出していって、本当に勉強になります。身の毛がよだちます。

さて「一勝九敗」と言いながら、負けても仕方がないという楽観的な記述は微塵もありません。

柳井氏はむしろ戦国時代の野武士のようで、どの事業も命をかけています。
つまり負けとは、首を取られないうちに退却することを意味していて、大負けしたら全員討ち死にということです。

日本にも凄い人がいるんだなぁと、感激にひたっているところです。

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