レバレッジ・マネジメント:本田直之(著) 20:60:20の法則がもたらす経営思想

まず「レバレッジ」というタイトルに引かれました。

本田直之氏は、ビジネス本のベストセラー著者? のようですが、コンサルタントが本業なので、おそらくよい会社、よい経営者、ダメ会社、ダメ経営者を、嫌というほど見てきているのでしょう。

よくある、脳内アドバイスではなく、実際の企業や人を見てきての著書ということを織り込まないといけないですね。

レバレッジ・マネジメント:本田直之(著)

leverageは、テコ・レバーleverをうまく使う、テコの作用、テコの原理とか、そういった言葉です。
影響力という意味でも使われるようです。

私が知っている「レバレッジ」は、金融用語で、自己資本が少ないときに、他人資本を調達して、もっと大きな利益を生み出す意味に使われます。

堀江貴文元社長が、フジテレビの株主であったニッポン放送を買収するときに用いた手法が「レバレッジド・バイアウト(Leveraged Buyout)」であり、LBOと呼ばれています。

ですから、この本では、より高度なアウトソーシング、小さな会社やベンチャー企業が、上手に外部の力を借りて、より洗練された経営に取り組む、より効率的に組織を大きくする、そう期待して読みました。

レバレッジ・マネジメント―少ない労力で大きな成果をあげる経営戦略』: 本田 直之

しかし、まったく違っていましたね。

どうやら著者の本田直之氏は、より効果的な方法、うまいやり方、という意味で「レバレッジ」を使っているようです。
テコを使って、少しのエネルギーで最高の成果を引き出す、そういうことでしょう。

  • 経営者のレバレッジ
  • 戦略のレバレッジ
  • 営業のレバレッジ
  • ブランドのレバレッジ
  • 仕組み化のレバレッジ
  • 組織のレバレッジ

上記のように最重要6ポイントの68項目について書かれていました。

Amazonのレビューで、既に知っていることばかりとか、ありきたりとか、売るための本でネタが枯渇してるとか、どこでも見られるネガティブな書き込みがありますが、これも後述の「20:60:20の法則」そのものかもしれません。

私が思ったのは、例えば、私や読者が200ほど知っていること、当たり前のことがあったとして、その内の68ほどがこの「レバレッジ・マネジメント」に書かれていたとします。

その時に、どのような感想がわくでしょうか?

  • なーんだ、知ってること、当たり前のことばかりじゃないの? という反応か
  • 200の内の132は劣後順位に入り、この本に書かれている68こそが優先順位なんだ、と思うか
  • あるいは、68が全部意識してクリアできているのか、と自省するか

この本は、会社を経営していて、どうやって大きくしようか、なぜ社員の働きにバラツキがあるのか、自分はどうやって成長するべきか、そのように真面目に悩んでいる社長のためのコンサル本となっています。

ですから、そういった問題意識がない人には、あまり価値を見出せないかもしれません。

自分の会社を、何倍もの売上や利益を上げるようにしたい、上場したい、自分も社員も桁違いの報酬を得たい、そういった上昇志向を持ち努力を惜しまない、そういう人が読むと心がビンビン響くでしょう。

20:60:20の法則 組織は、良い・普通・悪いの構成比がつねに一定

「20:60:20の法則」が取り上げられていました。

どんな組織でも必ず、良い・普通・悪いの構成比が必ず「20:60:20」になると。

これも、ありきたりですよね?

悪い20を切り捨てると、残りの80がまた「20:60:20」で、悪い20が生じる…

決定的なのは、組織を改善しようとして、悪い20にモチベーションを注いだり、ありとあらゆる手段を講じても、抜本的な解決にはならなかったという実践結果が書かれています。

この悪い20の人たちは、今自分たちが問題としていることが解決されると、また別の問題を発見し、不平不満を止めることはないと。

もうひとつは、普通の60の人たちは、組織が上向きの時は良い20に引っ張られ、下向きの時は悪い20に引っ張られると。
つまり、付和雷同というか、風見鶏というか、ぶれることが本性というか…

例えば内閣支持率も、20%がボーダーラインと言われているのは、案外こういうことかもしれませんね。
絶対支持が20%、絶対不支持が20%。中間は様子を見て、支持へ回るか、不支持へ回るか。いよいよダメダメって時に、普通の60%が不支持側へ引っ張られると…

ネットでは、イナゴの活動範囲が広く、声も大きいので、ネガティブな書き込み、なんの生産性もない悪態や罵倒などの嫌がらせが目につきますが、所詮は悪い20%はついて回るわけですよ。

ともかく、組織長や経営者は、この悪い20%が必ず存在するものとして、これに心を奪われず、動じず、良い20%を厚くもてなし、普通の60%を引っ張っていくように仕向けることが、ベストということになります。

ダメな人間、どうしようもないヤツ、不良社員が、かならず20%はいるんだ。

なんだか、恐ろしい達観ですね。

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