竹中平蔵氏講演 2009-11-25府中商工会議所会員大会
竹中平蔵氏が府中市にやってきた。
われわれ府中商工会議所の会員は、無料で氏の講演が聞けたのである。
頭がよくて、理路整然、本物の経済理論を平易に語り、最近ではまれな超感動に耽っている。
氏も批判しているところの、テレビ、特にワイドショーに出てくるコメンテーターとは雲泥の差であった。
備忘録もかねて、メモを取った講演内容を起こしてみよう。
グローバル化とデジタル革命
まずは、現在の経済の基調は、グローバル化とデジタル革命であると。
経済活動が地球規模で行われている以上、同じ質の労働であれば、世界で一番安い賃金へ収斂していく。
それを加速しているのが、業務の処理や遂行のベースとなっているデジタルである。
100年に一度の危機でもないし、アメリカ発のリーマンショックで片付けてもいけない
統計データからは、現在の経済成長率も失業率も、決して100年に一度の落ち込みとはなっていない。
(メディアやコメンテーターは、ソースを示せ。ウソをつくな。視聴者を騙すな。石崎追記)
アメリカには、住宅バブルを呼び込んだサブプライムローン問題があったのだが、ヨーロッパにも不動産バブルがあり、ユーロやポンドも実際の価値以上の評価がされていた。
もちろん日本も、円安バブルで、輸出産業は実力以上の利益を貪っていた。
V字回復ではなく、W字回復を想定している。つまり、二番底もあるということ。
事業者が今心得ておくべきこと
政治的には、来年の参議院選挙までは票取り合戦で、ポピュリズムが隆盛を極めるだろうから、それ以降に、選挙を意識しない政党の、特に政権与党の手のひら返しがあるだろう。
そこで何が起こってもいいから、精一杯基盤を作っておくこと。
格差は改革によって縮小し、バラマキによって拡大している
麻生政権前夜までは改革政権であり、内需も実は拡大しており、経済も成長しつつ将来的な期待も手伝って、日本への投資熱もあった。そのため雇用が拡大し、失業者を吸収し、よって格差は非常に縮まっていた。
麻生政権が、すべてを破壊した。鳩山政権も同様である。
日本では、1980年代終わりごろから格差が出はじめている。これは最初のグローバル化による低賃金化という世界的な趨勢でもある。
また、都会と田舎では、絶対的に格差は広がる。
貧困は、国家として解決する問題であり、セーフティネットの構築が必須である。
日本の将来
世界の先進国がほとんどすべてやっていることを、日本はやっていない。
たとえば、法人税率の引き下げ。
元気な企業は、雇用を生み、需要を生み、消費を生む。
これまた、世界先進国の中央銀行がやっているような役割を、日本銀行は果たしていない。
やっていない重大なことがあっての今だから、日本には希望がある。
質疑応答
以上で、一時間を超える竹中氏の講演が終了。
最後に2人の方の質問に対する回答。
現政権がデフレ宣言をしたが
デフレはよくない。
1,000万の売上が900万になる。仕入れも連動して500万から450万になるだろうが、利益も減る。
しかし、過去の借金はそのままだから、収入ダウンの中で返済するという、ハンディが生じる。
先ほどの、日銀の話で、ある意味ではインフレ目標を持つべきだ。
W字回復、二番底はどうなる
国外要因としては、アメリカの不良債権の見積額が少ないため、これがもっと大きいと発覚したときに、リセッションもあり。
国内要因としては、これ以上の財政赤字は国家的破綻を意味する。今現在でも、25%の消費税率にしないと無理なのに、これ以上のバラマキは危険。
内外が、もうは日本ダメだ、と判断したとき。
最初の挨拶と近著『「改革」はどこへ行った?』
さて、私の住んでいるところは福山市。選挙区は、「広島7区」である。
事情があって、福山商工会議所には所属していないし、これからもないはずだ。
ところで府中市は、「広島6区」である。あの亀井静香センセイの選挙区である(笑
竹中氏は冒頭に、「よくぞ、この府中市に私をお呼びになりました」と。もちろん、会場は笑いの渦である。
また、最近書き下ろした本の説明も。
「改革」はどこへ行った?―民主党政権にチャンスはあるか―: 竹中 平蔵
おそらく、今回の講演を敷衍するものになっているだろう。