ブラック・スワン―不確実性とリスクの本質: ナシーム・ニコラス・タレブ

私は、前の1円株式会社の社長ブログで、偶発性について、人生や経済や歴史の不確実性について、折にふれエントリーしてきた。

タレブの『ブラック・スワン』は、今の時代や私にとって偶然の出会いではあるのだろう。
昔も、こういった「不確実性」をうったえ、科学と称した均整のとれた理論のバカバカしさを喝破した人はいくらでもいるのだから。

『ブラック・スワン – 不確実性とリスクの本質』ナシーム・ニコラス・タレブ(著)

『ブラック・スワン - 不確実性とリスクの本質』ナシーム・ニコラス・タレブ(著)『ブラック・スワン - 不確実性とリスクの本質』ナシーム・ニコラス・タレブ(著)

まあしかし、私の業界関係者のブログでは、おっそろしく書評がエントリーされることがない。

本を読んでいないのか?
仕事に活かす読書ができないのか?
業務にインテリジェンスが必要ないのか?
頭脳労働ではなく、電話営業やドアツードアーなどの肉体労働が主だからなのか…

だから、SEO関係のブログを読んでも、おもしろくない。

私からすれば、SEOの外の知識も潤沢でないと、SEOでは成功しないと思うのだが。
なぜなら、途轍もない知性の集団が検索エンジンを作り上げているからである。

メタタグキーワードごときで、騒ぐでない!

さて、たった今読んでおくべきビジネス書を紹介する。

ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質: ナシーム・ニコラス・タレブ

どの世界にもいる「ブラック・スワン」 SEOにも…

タレブがそう定義しているかどうかは知らないが、人間は、リスクは対応できるが、不確実性には対応できない。

リスクは、知りうる危機であり、不確実性は、知りえない危機である。

最近のリーマンショックは、不確実性の最たるものだろう。
タレブは、こういった類のものを「ブラック・スワン」と呼ぶのである。

SEOでは、アルゴリズムの変更やペナルティの導入による突然の順位変動を、ブラック・スワンと言っていいだろう。

1ページ目から1000番の圏外に消えたなら、青天の霹靂、予想外の大惨事である。

だがしかし、こういった順位変動をリスクに、知りうる危機に変えることは可能である。

SEOの方法論を違ったパターンにして、複数のメインサイトを運営するのである。

変動にさらされないサイトはないと思うべきである。

ともあれ、ノーベル賞をもらった経済学者級でも、政策や株式市場でほとんど必ず失敗しているわけだから、一般の日本の商用サイトの運営者レベルでは、危機管理なんて思いもよらないはずである。

だから、こういったところに気づいた人だけが、確実に儲ける。独り勝ち、総取り、みんな泣いているところで高笑いだ。

ブラック・スワンをおぼろげにも感じることができるならば、ビジネス的なダメージをできるだけ軽くする対応は可能なのである。

アメリカ国防省(ペンタゴン)に招かれて…

さて、そのSEOが相手にするのは、アメリカの検索エンジン会社。

よって、アメリカの知性は、いつも敏感に捉えておく必要がある。

ブラック・スワンの著者のタレブは、ペンタゴンのシンクタンクに招かれたらしい。リスクに関するブレインストーミングのセッションに。

しかも、会場は何とラスベガス!

上巻の229ページだ。

まず、アメリカの軍部が、シンクタンクを持っていること。さらにそのシンクタンクが民間の知恵を借りること。その知恵がリスクやら不確実性やらということ。そしてそのリスク・不確実性の知恵者として学者のみならずトレーダーやギャンブラーまで招待していること。

これがアメリカである。

GoogleやBingは、こういったアメリカの知性で作られているのだ。

IntelやOracle、AmazonやApple、みーんなアメリカでしょ!

米軍が不確実性を研究していること、そのために民間から株式取引や博打打ちのプロからもヒヤリングしていること。
このことに驚かない人は、感性があまりにないので、良き友人や協力者を持つべきである。

金融系のスペシャリストの話では、

軍部は純粋なインテリやリスク思想家を、ほとんどの、というかおそらくどの業界よりもたくさん集めているそうだ。

実際、国防次官補のポストにある人は、まるで哲学者のようだったと。

ペンタゴンは、不確実性に名前を付けているらしい。「未知の未知」と。
これに対して、リスクは「既知の未知」だ。

私が強調したいのは、こういったリスクや不確実性などに見られる、アメリカという国家のエコシステムである。

つまり、国家や政府などは、国民の意識の集大成であり、一企業もまたそうなのである。

上層であっても、組織である以上、突出したリーダーだけが賢くて、バカを引き連れて巨大な成果を上げるということはあり得ない。

全体的な人材の多さ、層の厚さと広さがなければ、能力集団は出てこない。

そして、こういったアメリカ人が検索エンジンを作っていることも、射程に入れるべきなのである。

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