実践! 多読術 本は「組み合わせ」で読みこなせ: 成毛 眞

明けましておめでとうございます。
2011年もよろしくお願いします。

元旦早々の書評です。

一年の計は元旦にあり、
かどうかは分かりませんが、とにもかくにも尊敬する成毛眞氏の本を紹介します。

実践! 多読術 本は「組み合わせ」で読みこなせ: 成毛 眞

実践! 多読術 本は「組み合わせ」で読みこなせ: 成毛 眞

目次
第1章 超併読のある生活
第2章 賢者の読書、愚者の読書
第3章 経営者は自然科学に学べ
第4章 書評の技術(書評とキュレーター
第5章 賢者の蔵書棚を作ろう―厳選ブックガイド

この人にも著作にも、賛否両論あるようです。
私は瘴気ただよう思想が好きですが…

第三章の「ノンフィクション・ミステリーで、常識を疑う心を養う」から、なぜ常識から解放されて夢を見なければならないのかの部分を引用します。

…疑う余地がないような論に対してこそ、疑うことをせずして、平均から逸脱できるはずはない。

…これからは、常識を覆して他を圧倒するようなビジネスモデルを作り上げたところが生き残るはずだ。

第二章の「ノンフィクションは、イギリスとフランスが抜きん出ている」から、アメリカ人とイギリス人の違いの部分を引用します。

…役に立たないような知的探求はイギリス人の方が優れているように思われる。さらにその蘊蓄を記述することについて、イギリスのほうに歴史があると思うのだ。

 それはまさに、知的探求心だ。…食うに困らず、アメリカの学生のように、「卒業したら投資銀行に勤めて一旗揚げる」などという換金性のある夢を持たない人たちだ。

 ある意味で欧州のエリートというのは、捨てたものではないかもしれない。エリートが闊歩する世界は合目的的ではないから、世知辛くないのではないか。大衆を納得させるための予定調和も必要ない。

「常識への隷属」でしかなかったら、まだ見ぬ市場を開拓できませんし、不測の事態にも対応できません。

「換金性の妄想」に陥った人たちは、かならずどこかで失敗するでしょう。遊びというか、余裕というか、高みというか、それが個人的にも必要です。

いろいろなジャンルの本を、同時に読めという結論ですが、
意味は、たとえば事業も予想不可能なことが起こるし、競合が予想できない商材を市場に投下しないといけない。それには読書を通じて、常識を破り夢を見る訓練を行うべきということでしょう。

最後に、第五章の短文書評の中から、ただ見とれた文体の箇所だけを抜き出して終わります。

家の設計をするということは人生を設計することでもある。

思想のある料理本なのだ。

料理は作業でもありアートだと思う。

先進国の子供たちが気軽に食べているチョコレートを作るために、いかにアフリカのカカオ農場で働く子供たちが過酷な労働を強いられているのかということが書かれた本だ。

キリスト教が、いまだに新興宗教の色彩を色濃く残していることがわかる。

じつは薬害エイズを引き起こしたみどり十字の前身は日本ブラッドバンクであり、六名の取締役中三名は七三一部隊の生き残りだったのだ。

うーん、多読であり、多感ということですね。さすがです。

眠れぬ夜の追記

年末年始は、まさしく本やDVD、CDなどを買い込んでしまい、非換金性を越えて、趣味道楽のお金と時間の浪費に耽ってしまいました。

生活もすっかり狂ってしまい、明け方に就寝して昼過ぎに起きる毎日です。

さて、思い出したように、この本の引用忘れの部分、特に自分への戒めを追記しておきます。

「はじめに」から

読むべき本は選ばなければならない。安易なビジネスのハウツー本や手軽すぎる入門書、あるいは簡単に儲かったり健康になることを謳った本を何冊読んでも無駄だ。かえってバカな「大衆」になるのがオチだ。

結局、成毛さんのように功成り名を遂げることができないのも、上記のような有様だからかもしれません。人より高い位置に行きたければ、人より高い知識が必要なのでしょう。

第四章の「書評とキュレーター」から

キュレーターは専門家ではあるが、評論家ではなく、推薦人なのだ。

と成毛氏は自分の書評はキュレーターのものであると言っている。

世の中に金と時間の余剰があるからこそ、王朝文学も歌舞伎も狩野派も生まれてきたのだ。

辛いことですが、収奪と富の集中、貧富どころか身分の圧倒的な格差、そういったものが奈良の大仏や金閣寺などを造らせているんですね。

まあ今では、ダムや空港や○○館などが…

ところで、眠れぬ夜に急に思い出して、どうしても引用したくてたまらなくなった箇所、

…私の場合はお勧めすることしかしないから、褒める文章だけはうまくなったような気がする。

 これは、日常生活においても、仕事の上でも得なことだ。人間関係を円滑にするためには、褒めることが基本だからだ。少なくとも、人を蔑み、バカにするための言葉がうまくなるよりもはるかに得だ。人をバカにしてメシが食えるのはテレビのなかのコメンテーターやタレントくらいなものである。

実践! 多読術 本は「組み合わせ」で読みこなせ: 成毛 眞

「大衆」本を読まず、人をバカにせず、褒める。
そうすれば、失敗することはないでしょう。

(2011-01-06 01:30追記)

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