石田梅岩『都鄙問答』の商家資本主義 石門心学と日本経済政策史
顧客第一主義、利益追求、能力給と非世襲の経営者。革命的な商人道
龍馬伝を見ていると、よくぞ短期間に欧米列強に対抗できる国家をつくり、大産業を興したと、あらためて驚嘆を禁じえない。
失礼ながら、東洋では植民地化されたことのない希有な、島国住人の優秀性を感ずるところである。
ある本で知ったのだが、江戸時代にすでに醸成された資本主義のエートスとなった石田梅岩の『都鄙問答』を、解説書で読んでみた。
石田梅岩以降に世間に広まった「石門心学」が、徳川幕府の封建制度の下での商人道が、明治維新後の起業家を輩出させたのではという期待である。
著者の由井常彦氏は、家父長的で村社会的な労使一体で株主無視の企業こそが、日本の繁栄のベースとなったと、礼賛している。
つまりは、世界標準の株主資本主義を否定し、市場原理主義や格差のないパラダイス日本を持ち上げている。
これは、まったく納得できないし、市場=消費者無視で、企業の経営者と労働者だけが生き残る仕組みを称揚するのは、嘔吐感をもよおしてしまう。
だがしかし、著者のイデオロギーとは別に、著作はいろいろ物語ってくれた。それをかいつまんで書いておく。